本名Alan Abrahams。複雑に絡み合う電子音によるテクスチャーを舞台にして、ダンスフロアに陶酔をもたらしながら、自らの気だるいボーカルに乗せて感情を発露させる未来型ソウルミュージックを提唱し続けるミュージシャン。アパルトヘイト後のケープタウンで幼少期を過ごした彼は、シカゴハウスの台頭に合わせて1997年にロンドンへ移住し、それまでに培ってきた自身特有の感性を体現するため、Portableとして制作を始める。2000年代前半のクリックサウンドを牽引したレーベルBackgroundから初期作品を発表後、Leratoと共にセルフレーベルSüd Electronicを始動。2007年のアルバム「Powers of Ten」に先駆けてリスボンへ拠点を移した彼は、Bodycodeとして、Portable名義における強烈なテクスチャーを肉体的感覚で際立てることで、よりダンスフロアに根付いたサウンドを指向するようになった。同時期から自身のボーカルが大胆にフィーチャーされるようになり、Perlonから発表された2011年の大作「Into Infinity」へと結実する退廃的ソウルミュージックの礎が形作られた。今夏に発表された「Alan Abrahams」では、そのタイトルに呼応するかのように、別れと出会いなど極めてパーソナルな内容が綴られている一方で、さらなる表現力を獲得したサウンドデザインと楽曲構成を通じて、独特に紡がれるAbrahamsサウンドの新たな一面が映し出されている。