Amelie Lens(アメリー・レンズ)。現在、世界のテクノシーンの最前線で活躍するアーティストは西ヨーロッパの小国ベルギー、アントワープを拠点に活動している。
Lenske と EXHALE Recordsという二つのレーベルを運営し、EXHALEでは、同ブランドのクラブイベントを各地で開催し、ラジオ番組を定期的に制作するなど独自のプラットフォームで発信を続け、そのコミュニティは拡大し続けている。もはやピークタイムやメインステージでプレイすることしかなくなった日々のDJギグをオンラインでフォローアップし、ファンと交流し、次世代の才能をも発掘していくなどフォロワーとの距離を大切にする。彼女はいう。「私のコミュニティがEXHALEで、EXHALEが私の唯一のコミュニティ。一緒に大きくなっていきたいのです」。2022年はAwakening、 OFFSonar、Time Warp,、Tomorrowland、Creamfieldsのフェスティバルや、イビザ、DC-10のレジデンシーをはじめとする、ポストコロナの幕開けとなったダンスフロアで、塞がれた時の終焉を祝うかの如く、数々の歴史にのこるパフォーマンスをした。失われた2年の間にそのコミュニティと共に多く飛躍した彼女はライフスタイルとしてのレイヴカルチャーを提唱し、そのイベントやプラッフォームでは、一生続く何かのコネクションを築くことができると信じているのだ。
母方の血筋としてベルギーにてフランス国籍として生まれたアメリー・レンズ(現在はベルギー国籍を取得)は音楽的にはナイン・インチ・ネイルズ、アンダーワールド、ボーイズ・ノイズ、エレン エイリアンらの音楽を愛する少女だった。ベルギーは80年代後半からNew beatというダンスミュージックのジャンルの発祥の地として後のレイブ、アシッドハウスの誕生の源流となった場所であり、初期テクノシーンのレガシーであるR&S Recordsの本拠地であるなど、エレクトロニックミュージックの歴史においてもとても重要な土地だ。当然ながら、ダンスミュージックは国民にとってとても一般的なもので、そこで生活していれば身近な音楽だ。 さらに、彼女の育った街アントワープは中世より、ヨーロッパの商業の拠点として、また、近世ではヨーロッパ第2の湾岸都市として栄え、必然的に文化の多様性に柔軟な環境が街の空気の中に存在していた。このような環境の中で幼少より様々なエレクトロニックミュージックに触れながら育ち、16歳の時に訪れた、フランス・ベルギー国境沿いの街で毎年述べ20万人以上を集め開催されるDourがその人生を変えたのだという。人生で初めて音楽と自分が繋がった気がした、という彼女はそのフェスティバルから帰宅してからすぐに、エレクトロニックミュージックの世界にどっぷり浸かっていった。その後しばらくファッション業界に置いていた彼女も、そのダンスミュージックへの情熱が捨てきれず、2014年にファッション業界を離れ、専業のDJ/プロデューサーへと転身。時間をおかず、ベルギーはハッセルトという街のLabyrinth Clubで、自身がホストするクラブナイトを開催し、Pan Pot主宰のレーベルSecond StateからContradiction EPをリリースした2017年頃にはすでに、耳のはやいヨーロッパのクラバーの間では誰しもがその名を口にする人気アーティストとなっていった。2020年に獲得したBBC RADIO1のレギュラー番組のスピリットは現在のEXHALE RADIOの原型ともなった。第二次黄金期を迎えたアメリーとそのコミュニティと共に成長していくか、傍観するか、は共にあなた次第である。