現代のデトロイトにおけるディープなサウンドプロデューサーとして知られるPatrice Scott。若かりし時分に同胞たちと同じくJuan AtkinsやDerrick May、Kevin Saunderson、そして隣町シカゴのFrankie Knuckles、Larry Heardらの影響を強く受けながらダンスミュージックに没頭していくこととなる。
1984年に初めてターンテーブルを手に入れた彼はデトロイト川を挟んで立つカナダのAmsterdam Loungeでレジデントを担い、Ken CollierやJeff Millsらと場を共にするに至った。その後、デトロイトのローカルDJとして耳の肥えた客を相手にミキシングの実力を磨くと共に、カセットレコーダーとドラムマシーンを使い楽曲制作をはじめる。時代の変遷に流されることなく着実な創作活動を続け、2006年に自身が設立したレーベル〈Sistrum Recordings〉より遂にデビューEP「Atmospheric Emotions」を発表。その崇高なエレクトリックサウンドはディープテクノの金字塔としてヨーロッパのDJからも絶賛され、世界中からオファーが舞い込むようになった。
2015年には待望の1stアルバム「Euphonium」をリリース。90年代のディープハウスと伝統的なテクノ、そして新しい時代の感性をオリジナリティ溢れる手法で混ぜ合わせた集大成と呼ぶに相応しい作品となった。近年はよりハウスサウンドに傾倒。今や熱烈なファンを持つ〈Sistrum〉の舵取りとして、新たなアプローチをはじめている。ゆっくりと、しかし着実に30年以上のキャリアを積み重ねてきたPatrice Scott。熟成された豊潤な音楽は他に類を見ない極上の響きとなっている。