Vatican Shadow

(Hospital Productions | Ostgut Ton | US)

Vatican Shadowはマルチメディアアーティスト、Dominick Fernowによるテクノプロジェクト。メロディックなループと荒削りなリズムが邪悪で魅惑的なテイストと融合したオリジナリティに溢れたプロジェクトである。
2010年にスタートしたこのプロジェクトは多様なドラム、官能的なシンセ、金属音が主張する打ち込みなどをカセットに分離させ、それらを再度レイヤー、ライヴコラージュすることにより生まれる。そうした特殊な製法により生み出された初期作品は自身が運営する〈Hospital Productions〉から限定100枚/カセットオンリーの「Byzantine Private CIA」としてリリースされ、その後も2011年~2012年に連続して10作品が同レーベルよりリリースされた。〈TYPE〉よりリリースされた「Kneel Before Religious Icons」はRegisにより素晴らしいリミックスがなされ、オリジナル版/リミックス版ともに批評家や音楽仲間より賞賛を得る。6台のテープデッキを駆使したBerghainでのヨーロッパデビュー公演の後、伝統的なテクノの枠組みの外側へと独自の大きな一歩を踏みいれる。
このシーンにおいても稀に見るほどの体感的な欲求を満たしつつも、祝福的なエネルギーをフロアに投下すると同時に、催眠的なメロディと猛烈なドラムアサルトが容赦なく突き刺す様は、オーディエンスの畏敬の念に触れる。
Dominick Fernowはダンスミュージックシーン以外でも、ノイズプロジェクトPrurientとしても知られる。1997年に〈Hospital Productions〉と同時に発足したPrurientは多様で予測不能なサドマゾチックなフィードバック風景を様々な特徴を持つボーカルとコラージュしている。何百というカセットと限定されたレコード盤をもって、カルトコレクターたちから絶大な支持を得ることに成功すると、ドローン/ノイズ/インダストリアル/コンピュータミュージック/パンク/EBMの急進的な融合として発表された「Frozen Niagara Falls」はトリプルLPとしてリリース、批評家の賞賛を浴びた。
〈Hospital Productions〉は煉瓦とモルタルでできた、マンハッタンのイーストビレッジから梯子を下り、トラップドアをくぐり抜けて到達する悪名高きショップとして現れ、直接アーティストやレーベルからリリースされたものに焦点をあて、曖昧でありながらも独自の存在感を放つものとなった。Silent ServantによるデビューLP、Alessandro Cortiniによるシリーズ、及びFunctionとVatican Shadowのコラボによる、地元ニューヨークのアンダーグラウンドシーンに焦点を絞りジャンルをクロスオーバーし成長を続けた。
多数のリリースを通し、特異なキュレーションでグローバルなビジョンを表現しサポート、カルト的な人気を構築、20年間の献身を通してFernowはエレクトロニックミュージックサブカルチャーにおける多くに精通し一見矛盾する派閥を発展させ、結集させた数少ないアーティストの一人である。
今回の来日では、よりインダストリアルなテイストにフォーカスする、Prurient名義でのセットも披露する。