DJ/プロデューサー、Answer Code Requestとして知られるPatrick Gräserは、伝統的な4ビートを基調としたテクノの世界において、ハイブリッドなアプローチを持って一際異彩を放つ存在といえるだろう。2012年にデビュー、その後間もなくBerghainのレジデントとなって以来、Gräserは複雑なブレイクやインダストリアルなサウンドなどを織り交ぜた作風で〈Ostgut Ton〉〈MDR〉〈Dolly Deluxe〉〈Monkeytown Records〉などの要注目レーベルよりリリース、リミックスワークを発表。DJとしてもベルリンのシーンにおいて不可欠な存在感を維持しながらも、彼特有のベースミュージックやブロークンでヘビーなテクノを世界中のクラブやフェスティバルで披露している。
東ドイツの町フュルステンバルデで生まれ育ったGräserは、ベルリンの壁崩壊時、9歳だった彼が東ドイツのユースラジオDT64による音楽教育の終わりと共に、ヒップホップに魅了され、その後ハードコアやアシッドなどにも傾倒していくことになる。同郷であるMarcel DettmannとMarcel Fengler等と思春期を共に過ごしエレクトロニックミュージックへの情熱を共有、無秩序なDIYパーティでダンスミュージックを体験する。90年代は昼の仕事と平行して週末にはHardwaxやDeliriumなどのレコードショップで購入したクロスジャンルのレコードに耳を傾け、ミックススキルの習得に時間を費やし、ジャングル/ドラムンベース/デトロイト/IDM/UKベースミュージックなど多様な音楽を吸収した彼は独自のアプローチを成立させたプロダクションを開発していくことに繋がっていく。
2014年に〈Ostgut Ton〉から発表され話題となったデビューLP「Code」では積極的にテクノの限界を押し広げることに挑戦し、2018年発表の「Gens」ではより実験的なアプローチを披露。彼の音楽的ビジョンは自らがした音楽体験をアップデートし、自身のフィルターを通しオリジナリティを突き詰めたものである。