Adam Xの歴史を語るには、1990年のニューヨークに遡らねばならない。彼はそこで、兄弟であるFrankie Bonesとともに、アメリカでは初となるテクノ専門のレコード店Groove Recordsをオープンさせた。のちにSonic Groove Recordsに改名したその店の運営には、DJのHeather Heartも加わることとなった。Sonic Grooveは90年代を通して、世界有数のレコード店としてDJやコレクターに愛された。
Sonic Grooveの活動はテクノイベントのオーガナイズにも拡大し、特筆すべきは1991年に開始した伝説のパーティStorm Raveを主宰していたことである。Storm Raveは、アメリカ東海岸では初のテクノ縛りのウェアハウスパーティであり、Sven VäthからRichie Hawtin、Damon Wildに至るまで当時アップカミングだったアーティストを取り上げていた。
1995年、AdamはSonic Grooveをレコードレーベルとしても始動させ、彼一人で運営に当たった。Kevin SaundersonやDave Clarke、Oliver Lieb、Abe Duqueといった実績のあるプロデューサーから、OrphxやRealmz、Dasha Rush、Richard Hingeといった隠れた才能まで、幅広いアーティストの作品をリリースしてきた。
Adam自身も、1990年から本日まで20年以上の長きに渡り、ソロ/コラボレーション両方で、様々なレーベルからリリースを重ねてきた。CLR、Prologue、Peacefrog、Mangetic North、Wax Trax、Sativa、Scandinaviav――これらはほんの一部に過ぎず、枚挙にいとまがない。
DJとしてはAdam X名義で、Aphex Twin、Derrick May、Richie Hawtin、Nitzer Ebb、Andrew Weatherall、その他数え切れないほどの、エレクトロニックミュージック界のトップに君臨する名だたるアーティストとの共演を果たしてきた。舞台も国を超えて多岐にわたり、Berghain、Mutek、Mayday、DEMF、Rex、Tresor、PS1、fabric、Monoxをはじめとする世界有数のヴェニューで累計何千ものイベントやパーティに参加してきた。Adam Xは今、これまで世界中を駆け巡ってきたDJキャリアの中で最も長い時間を過ごした東ベルリンを本拠地と呼んでいる。彼はそこで、制作活動、Sonic Grooveのレーベル運営、インダストリアルなテクノイベントのオーガナイズと多忙な日々を送っている。これまで彼のイベントには、Monolake、Biosphere、Doppelereffekt、Surgeon、Legowelt、Sleeparchiveのほか、多数の有能なアーティストを招聘してきた。
現在Adamは、Traversable WormholeとADMX-71という2つのサブプロジェクトを軸に活動している。Traversable Wormholeは、これまでの彼の名義の中でも最も人気があり、Chris Liebing主宰のCLRや、Traversable Wormhole Recordsから作品をリリースしている。ADMX-71としては、「Second System」をSonic Groove Experimentsから世に送り出したほか、デビューアルバム「Luminous Vapors」を伝説的なインダストリアル/実験レーベルHands Productionsからリリースしている。2015年には新名義X-Crashedを始動、「Where Were You In ’92 EP」をAnthony Parasole主宰のThe Cornerから発表。また同時に、ADMX-71名義でRon Morelli主宰のL.I.E.S.から最新作「Redacted Files EP」をリリースした。更には最新アルバム「Irreformable」を自身のSonic Grooveから数年間の沈黙を破って2014年に発表、RAに「テクノが単なるラップトップ作品の領域を超え、息吹を与えられた生命体として実体を得た」と評された。