Ion Ludwig

(UGold | Trelik | from Netherlands)

Ion Ludwigは、17歳でエレクトロニックミュージックの制作を始め、21歳にデビュー作を発表した早熟の実力派アーティスト。プロデューサーとして世界的に頭角を現したのは、2006年にButane主宰のAlphahouseから「Gaugamela Incode」をリリースしたときだ。それから10年、ひたむきに音楽性を追求しシーンに多大な貢献を残してきた異才として、その名は今や広く知れわたっている。

 

彼の音楽は、実に様々なものから影響を受けてきたと言える。初期のころからアコースティックギターやアフリカンドラムの演奏を自ら行い、楽曲に使用してきた。また、ツアーのため世界各地に飛び回る中触れてきた異文化も積極的に取り入れてきた。

その活動の中、拠点をオランダのレーワルデンからアムステルダム、そして2005年にベルリンへと移した。同都市には4年滞在し、Club der VisionaereやWeekend Clubといったヴェニューに出演しながら、ライヴパフォーマンスを完全なものにすべく磨きをかけていった。プロダクションについては、Alphahouse、Stock 5、Resopal、Thema、Motiv Bank、自身のレーベルQuagmire LTDから洗練されたミニマルハウス/テクノのレコードを続々とリリース、アンダーグラウンドシーンを築き上げてきた重鎮たちからサポートを受けることとなった。

特筆すべきは、Quagmire LTDから2010年にセルフリリースしたデビューアルバム「Free K Loudwiggle」だ。同作の収録曲は、ベルリン滞在中に合わせて21か月間の歳月をかけて丁寧に制作された。故郷であるオランダのクリング・ヴァン・ドースという町に移り住んだのち、そこで彼自身の手で2か月かけてミキシングとマスタリングを施した。細部にまでこだわり、大切に作り上げられたその美しい作品は、ジャズ、ファンク、ディスコ、ハウス、テクノといった多様なジャンルをカバーしており、抜きん出た創作力は言わずもがな、音楽に向けられた彼の献身的な精神と崇高なアート性を見事に体現している。2011年に発売したEPも、アヴァンギャルド・エレクトロニック・ミュージック界に新風を巻き起こした。2012年にはベルリンのDD Distributionに参加し、UGoldという新たなレーベルを設立、コンセプチュアルな作品を世に送り出している。こうした趣深い音楽は、中世の風情を感じさせる歴史的な建物の一室である「Ion’s Inn Studio」の中で、彼は昔からある楽器と最新鋭の機材を用いながら創り出されているのである。

ライヴパフォーマンスにおいては、ドラムマシーンとシンセサイザーの演奏に加え、これまでの制作の過程でラップトップに蓄積してきた音源をふんだんに用いながら、壮大で力強い音物語を紡ぎ上げる。