ベルリン在住のZipことThomas Franzmannは、過去10年以上に渡り、テクノやミニマルハウスにおいて最も重要な役割を果たしてきたレーベル”Perlon”のメインマンである。
1997年にフランクフルト・オッフェンバッハにてThomasをはじめSammy Dee、Markus Nikolai、Chris Rehbergerといった面々が集いスタートした”Perlon”は、統一された秀逸なアートワークと、リリースする音楽そのものの価値の高さを最優先したシンプルな作品主義というスタンスを貫きながら無二の存在感と信頼を得続けてきた。
ミュージシャンとしてのThomasのキャリアのスタートは、80年代から90年代初頭にかけてのSecond VoiceやBigod 20といったジャーマンニューウェーヴ/EBMバンドでの活動まで遡る。
“Perlon”設立以降、DJではZip、ソロではDimbimanというに2つの名義を使い分けながら活動を続けてきた。
Ricardo VillalobosやBaby Fordをはじめ、Sammy Dee、Melchior Productions、Dandy Jackなど数多くの傑出したタレントを擁する”Perlon”にあって、Thomas自身の個性もまた際立った存在感をみせる。テクノやハウス・ミュージックにおけるスケールや拍/音域の組み合わせなど、人々が無意識的に従う既成のありかたをThomasはほんの少しひねり、組み替えてみせる。そうしたほんのちょっとの発想の転換や既成のフォーマットそのものに対する素朴な疑問が、驚くほどフレッシュな瞬間やグルーヴを生み出せることを彼は自身のDJや作品の中で証明し続けている。しかも、それが単なる理論のみに収まらず「いま、そこにある音」という現象に余すところ無く昇華させている事実にこそ、このアーティストが持つ才能の凄みといえる。