マイアミで生まれ育った若き才能Anthony Naplesは、2009年からニューヨークを拠点に音楽活動を開始。初リリースは同市のアンダーグラウンド・ハウス・パーティーとして名高く、先日待望の初来日ツアーを行った「Mister Saturday Night」が2012年に始動させた同名のレコード・レーベルの第一弾作品だった。一気に注目を集めた彼は、翌年にはロンドンの〈The Trilogy Tapes〉から出したEPとグラスゴーの名店〈Rubadab〉のホワイトレーベルから放ったディスコ・エディットででさらにフォロワーを熱狂させた。若干26歳ながら、ラフなテクスチャーの中にグルーヴの輪郭を浮き立たせていくような独特なサウンド・メイキングとニューヨークのロフト/ガラージ・スピリットを継承しつつ、デトロイト・ビートダウンの影響も強く感じさせる一貫したDJとプロダクションのスタイルは、いわゆる「ロウハウス」勢の中でも群を抜く存在だ。その才能をいち早く見抜いたFour Tetは彼に最初にリミックスを依頼したアーティストの一人であり、また彼が運営するレーベル〈Text〉から、Naplesのデビュー・アルバムとなる『Body Pill』を昨年2月にリリースした。2013年には自身のレーベル〈Proibito〉を旗揚げしており、自らの作品以外にもHuerco S.などの同世代のプロデューサーたちの刺激的な作品を紹介し、レーベル・オーナーとしても優れた手腕を発揮している。若さだけでなく、The Loftなどからも大きな影響を受け、伝統も重んじる彼の、より安定感が増したDJプレイに期待してほしい。