NAZE

NAZEは、グラフィティで培われた大胆な線と色彩の表現が特徴的だ。
一見するとアンニュイな作品の中にもポップでユニークな要素が散りばめられており、その自由な表現で注目を集めている。
スピード感のある線は人体を大きく歪め、分断するほど荒々しく暴力的であるが、つぶやきのような思考の断片のような文字、流れ落ちる絵具から繊細な感情が読み取れる。ところどころ画面に現れる色彩のリズムは軽やかで、暗い絵画内世界にきらめきを与えている。NAZEの身体を起点として線が生まれ、線が形を生み、形が人物を生み、人物が物語を生む。世界の生成に立ち会うようなダイナミクスがNAZEの絵画にはある。それはアーティストの内的な世界として表象されているが、 同時に我々が忘れていた記憶を喚起するトリガーとして機能しているように思われる。「WASURETAKOTOWO WASURENAIDE」という文字がNAZEの作品にはよく現れるのだが、失われゆく記憶、内的な世界は常にこのようにその都度瞬間的にしか取り戻すことが出来ないのかもしれない。